噛み合わせの問題

噛み合わせの悪さは、歯並びや親知らず、虫歯の治療、他にも、寝ている間に歯ぎしりや食いしばりをしてしまう、頬杖をつくなどの不自然な姿勢を取る習慣があるということが原因になっていることがあります。

特に姿勢に関しては、環境が変わって起こることも少なくありません。例えば、デスクワークが増えて間違った姿勢で長時間過ごしてしまう、妊娠をしたことで普段の姿勢が変わったなどです。ゆがんだ姿勢で長時間を過ごすと、下あごの位置が微妙にずれていて、噛み合わせに影響するとされています。ずれた噛み合わせのまま食事をすると、噛む力が不均一になってしまい、あごだけでなく、肩や首にも負担を掛けてしまいます。ひどい場合には耳鳴りやめまいなどの症状が出ることもあるそうです。また、噛むことは瞬発力にもつながります。何か瞬間的な力を出す時に、人は自然と奥歯を噛みしめることがあります。特にスポーツ選手など、瞬発力が必須になっている人は、歯の治療に気を遣っているそうです。力を出すときに噛むということは、噛む力がなければ力を出しにくくなります。

また、噛み合わせが悪いことで、歯の寿命を縮めてしまうことも考えられます。逆に、歯のバランスが悪いことで噛み合わせの悪さにつながることもあるそうですので、歯の治療と合わせて顎の治療も行っていかなくてはなりません。

噛み合わせは、数ミクロンレベルのズレであっても少しずつ大きくなっていき、最終的には体に悪影響を与えてしまいます。無意識の癖や習慣から引き起こされることも多いため、自覚症状を持ちにくい部分とも言えます。何か影響が出てから治療を行うのではなく、定期的な健診を行い早期の発見に努め、悪い癖を正していく必要があると言えるでしょう。

歯磨き粉の歴史

人間が歯を磨くようになったのは、約1万年前からと言われています。紀元前1500年以上前の古代エジプトの記録にも、歯磨き剤の処方が見られたそうです。歯を磨く木である「歯木」が仏教と共に日本に伝来したとされ、爪楊枝の原型となる房楊枝を使って歯の手入れを行っていたそうです。日本で歯磨き粉(歯磨き剤)が導入され、商品化をされたのは1643年、江戸時代の初期とされています。塩や貝殻の粉末を混ぜた粉状のものだったため、歯磨き粉と呼ばれるようになりました。明治21年には練り歯磨きが発売されましたが、粉である歯磨き剤の印象が強く、現在でも「歯磨き粉」と呼んでいることが多いそうです。

歯磨き粉の多くは、ミントの味が付けられています。ミント味はリフレッシュ感があり、歯磨き粉との相性は抜群です。歯磨き粉は、口内の汚れを落とし、歯や歯茎の健康を守るためのものです。同時に、口内をすっきりさせる効果もありますので、適度な刺激と爽快感があるミントが採用されているそうです。子ども用の歯磨き粉は、ミント味では刺激が強いため「いちご味」「グレープ味」などの、甘い香りと味のものが販売されています。味を見ると砂糖が含まれているように感じますが、歯磨き粉の甘み成分は「サッカリンナトリウム」を使って調整されています。他にも、グリセリンやソルビットなどの香料も甘みを持っており、歯磨き粉の苦みや渋みの成分を緩和して、味を調える効果を持ちます。もちろん、糖分として体に影響はありません。味を整える成分は、子ども用の歯磨き粉に限らず、大人用の歯磨き粉にも使われているそうです。大人用の歯磨き粉に移行する前に使う、刺激の少ないタイプも多く市販されていますので、段階的に慣らしていくのが良いでしょう。

歯石の色

歯石は、歯についたプラーク(歯垢)が石灰化をしたものを指します。歯と歯茎の間の境目に発生しやすく、凹凸ができるために細菌が付着しやすくなります。プラークが石灰化するのは、唾液に含まれるミネラルなどの成分が反応するためです。そのため、唾液腺の近い下の前歯の内側、上の奥歯の外側に歯石ができやすいと言われています。歯垢のうちであれば正しいブラッシングで落とせますが、歯石の場合は歯科で取り除くしかありません。定期的な健診を行い、早めの予防と処置が大切です。

歯石は一般的に、白や灰白色をしています。白系のものは歯垢が原因となっており、歯肉縁上歯石とも呼ばれているそうです。年齢などを問わず、条件さえ揃えば全ての人の口内に存在します。放っておけば病気を引き起こす可能性はありますが、歯石が付着した段階では、歯科で取り除くことで治療は終わります。しかし、中には「黒い歯石」も存在し、こちらは早急に対応の必要がある危険なものです。

歯石が黒くなる場合、血液が混ざっていることが原因で、歯肉縁下歯石と呼ぶこともあるそうです。多くの場合は歯周病などの歯茎のトラブルが原因となっています。歯茎の奥深くから血液が溜まり始めますが、初期のうちはまだ表面に出てきていないために白い歯石の状態です。そのため、歯石が黒くなるほど目に見えて血液が見える状態というのは、「歯周病がかなり悪化している状態」とも言えるでしょう。歯周病は、放っておけば周囲の骨を溶かしてしまうので、歯が抜け落ちてしまうことも珍しくありません。黒い歯石自体は、白い歯石を取ることと同じく歯科で取り除くことができます。問題は、黒い歯石が原因の方ですので、早急な対応を行いましょう。

歯ブラシの構造

歯ブラシは、自分の口や歯の大きさ、歯並びや歯茎の状態に合わせて選ぶ必要があります。実際に持って見て手にフィットするかどうかも選ぶ基準となり、何本も持っておくことでさまざまな部分に対応できます。

大きく分けて、歯ブラシはハンドル部分、ヘッド部分、ネック部分の三種類から成り立っています。ハンドル部分は、手で握る部分を指します。多くの場合はプラスチック製で、軽く握った時に動きやすい形状になっているそうです。ヘッド部分は、口内に入れる部分で、ブラシがついています。サイズもさまざまで、毛先のカットの仕方も多くの種類があります。ネック部分は、ハンドル部分とヘッド部分を繋いでいる首にあたる部分です。ブラシ圧を正しく伝えられるよう、バランスを考慮してつくられています。

毛の硬さは、多くのものが「ふつう」とされていますが、他にも「やわらかめ」や「かため」が存在します。柔らかな毛先は、歯茎から出血が見られるなど、優しくブラシを当てたい人向けです。また、強く磨いてしまう癖がある人も、柔らかめのものを選ぶと良いでしょう。しっかりした磨き心地が好きな人は、硬めの毛先がおすすめですが、磨きすぎないよう注意しましょう。他にも動物の毛を使った高級なものなど、毛先だけでも種類があるので、自分に合ったものを選びましょう。

歯ブラシは、磨く場所によって使う種類を増やすことも効果的です。例えば歯の面の部分を大きく磨く場合にはヘッドが大きく硬めのもの、奥の届きにくい場所を磨く場合にはヘッドが小さく小回りのきく物を選びましょう。一般的な歯ブラシは、いずれも一定の規格をクリアしたものが市販されています。どれも品質が保証されているので、安心して使用することができます。

噛むことと歯について

食事をすることは、噛むことがセットとなっています。食べ物のおいしさは、よく噛んで食べることで引き出されるそうです。噛むことで食べ物の味の変化や香り、歯ごたえや舌触りなどの食感を楽しむことができます。特に学童期は生え替わりが起こりますので、食べ物を噛みにくくなります。噛む回数を減らさないようしっかりとした指導を行うことが大切です。また、よく噛んで食べることで食べ物が小さくなりますので、消化が良くなり、胃腸へ負担をかけることもありません。他にも唾液の分泌量も増えますので、口内の自浄にもつながるそうです。あまり噛まずに物を食べてしまうと消化に悪い、口内が不衛生になりやすいという反対のことが起こるのはもちろん、満腹感を感じにくくなるそうです。胃に食べ物が入ってから満腹感を感じるまでに、20分の時間が掛かるとされています。よく噛んでゆっくりと時間をかけることで、食事の満足度も上がります。

年齢と共に歯の本数が減っていき、硬いものを食べることが億劫に感じる人も増えるそうです。やわらかく噛まずに飲み込めるものは食事が楽ですが、顎の力や食べることの満足感を減らしてしまうことになります。食事の偏りから栄養バランスが崩れることも考えられるでしょう。歯が20本以上残っていれば、ほとんどの食べ物をおいしく食べることができると言われています。抜けた部分は入れ歯を利用するなどをして、咀嚼の回数を増やすようにしましょう。日本人の咀嚼回数は、戦前に比べて半数ほどに減ったと言われています。これはハンバーガーなどの外国のやわらかい食べ物が入ってきたことで、噛む必要が低くなったことが理由と言われています。かたい食材を選ぶなどの工夫をしながら、意識的に咀嚼回数を増やしていく必要があると言えるでしょう。

歯の寿命

歯医者さんに行くことが趣味だという友人に、歯科選びについて尋ねたところ、面白い答えが返ってきました。私自身は、祖母が90歳を越えるというのに、煎餅を美味しそうに自分の歯で食べる姿をみて育ったので、老化とともに歯が抜け落ち、たいていの高齢者は、部分入れ歯、総入れ歯なるものをあつらえて口元のメンテナンスをしているなどという事実を知るまでに、人生の半分以上の時間を費やしてしまいました。はじめて、総入れ歯なるものの存在を知った時は、かなりの衝撃とショックを覚えた記憶があります。「歯」というものは、大事な自身の顔の一部であり、美味しいものを美味しく食べるに欠かすことのできない、生きる上での重要な役割を果たす身体の一部です。私自身にとっては、当たり前のように生涯を共にする存在ではありましたが、しかしそうではないと知った時に、かけがえのない存在として、できる限り生涯、共存できればと考えるようになりました。話を少し戻しますと、歯医者さんに行くことが趣味だという友人に、「歯科」選びについて尋ねた理由がそこにある訳なのです。皆さんは、どんな理由で、歯医者さんを選んでいますか?私自身は、どうにか現在残っている自分自身の歯を長生きさせたく、歯医者を選ぼうと、検討しはじめましたが、友人に相談をしたのち、実際に、選んだ歯医者さんは、地元の以前からの行きつけの歯科です。なぜなら、歯医者に行くことが趣味という友人から返ってきた答えというのが、歯を大事にしたいのならば、歯医者さんを選ぶことよりも、まずは、自身の生活習慣を見直すことが先決だとアドバイスがあったからです。自身の生活習慣がどんな風に、自身の歯に影響を与えているかを知ってから、歯医者を選んでも遅くはないと友人は言います。皆さんは、そんな友人のアドバイスをどう受け止めますか?

認知症と咀嚼

先日、歯科の受付で順番待ちをする中で、ある冊子をめくっていると、面白い実験結果を報告する記事をみかけました。噛む力と認知症の関連が、書かれていたのですが、噛むことが認知症の予防につながると言うのです。認知症とは、高齢者に多くみられ、物事を考えたり、物事を判断したり、臨機応変に物事に対応し、人と人とのコミュニケーションを計る、人間が日常生活を送る上で、必要不可欠な能力であります。

認知症は、人間が年を取ることで、その認知機能がスムーズに働かなくなることからおこることだと言われています。認知機能が働きにくくなるということは、脳の神経細胞が減少し、脳神経に老廃物が溜まり、脳の代謝機能が弱まり、またそれらを活性化させる酵素が減ることなどで、認知をする機能が衰えることを言うそうです。昨今、問題となっている、高齢者の自動車運転による、高速道路の逆送、アクセルとブレーキの混同による事故、通常は、自動車が乗り入れない踏切内での走行などは、認知症からくる、認知機能の衰えが原因であると考えられています。

人間は年を取るもので、衰えも仕方がありませんが、「噛む」ことで、その認知機能が回復をみせるのであれば、とても興味深いレポートだと思いませんか?脳にある海馬、扁桃体、前頭前野などの領域への活性化、刺激が、認知機能への回復に役立つ報告されていました。ガムを噛むことで、刺激を受けた脳は、様々な感情や情緒を生み出し、その感情が、新たな会話をも生み出し、人と人とのコミュニケーション、さらには、そこに新たな神経ネットワークと人間的なネットワークが結ばれていくのだそうです。ガムを噛むことは、認知症予防になりそうです。

そこで、考えられるのが、食卓を家族や友人と楽しむということです。美味しそうな夕飯を前に、皆で、食卓を囲み、美味しいものを良く噛んで食べる。その時に感じる「おいしい」「楽しい」感情は、脳の認知機能を司る領域を刺激し、認知機能を活性化させ、美味しくバランスのとれた食事から摂取した栄養は、記憶にも身体にも御馳走になりそうです。愛情のこもった美味しい食事を、一品一品大事に噛みながら、皆で食卓を囲むことの大事さを、認知症のメカニズムから学んだ気がしました。歯科の受付に置いてあった、その冊子を手に取った人々は、診察を前に思わず歯の大切さを感じ、その場で改めて今ある歯を噛みしめるのではなかと微笑んでしまいました。

訪問歯科診療

歯科に通院できない人々の自宅や、老人ホームなどの住居施設に、ドクターや看護士が訪問して、診察を行なうことを、訪問歯科診療と言います。緊急時や、突発的な傷病に対して、診療を行なう場合は歯科の往診と呼ばれていますが、「訪問歯科診療」とは、ドクターや看護士が、定期的に自宅や施設を訪問し、治療計画や、治療方針を決定し、診療を行なうことを言います。ついこの間までは、療養の必要な老人、高齢者と言えば、病院に入院しているイメージがありましたが、介護保険制度の導入、医療制度の問題などから、病院への入院が制約されてきているため、自宅、老人ホーム、グループホームなどで、在宅医療を受ける高齢者の数は、年々、増加しています。また、そのような在宅医療が、今後、私たちの社会を支える上で、重大な役割を見こまれることは、超高齢化社会を目の前に、明確なことであると常々、言われてきましたが、皆さんの意識の中で、そのような在宅医療がどの程度、必要不可欠な医療として認知、認識されているでしょうか?国としても、「在宅療養支援診療所」、「在宅療養支援病院」の普及を目指しているとされています。

●在宅療養支援診療所・・・24時間体制で在宅医療に対応する医療機関

●在宅療養支援病院・・・24時間体制で在宅医療に対応する病院 在宅医療の普及の中でも、「訪問歯科診療」の役割は、在宅医療を必要とする人びとの需要の中でも、大きいのではないかと考えます。寝たきりの看護を受ける人々にとって、毎日の食事を楽しむという喜びは、健常者以上にあるかもしれません。超高齢化社会と言われている、2025年を前に、在宅医療システムについて考えてみました。歯医者さんに、治療に行きたくも簡単には行けない高齢者、入れ歯のメンテナンスをしたくとも歩行が困難な年配者たちが、在宅で歯科医療を受けられることは、理想社会としての夢語りではなく、現実化させていかなくてはならないミッションなのではないかと考えます。